地元名士の裏の顔は高利貸しという者もいる。手形の扱いはやっぱりプロ?
 
 約束手形は本物

 先般、当紙のもとに奇妙な約束手形が舞い込んできた。この手形は振り出し期日はおろか、支払い期日さえも未記入といった、重要な“約束事”が明記されていない半端なものだ。
 只、興味深いのが、刻印されている金額が2億円という高額な上に、振出人がかなり怪しい人物であるということだ。
 更に付け加えれば、振出人である安田稔の会社(安田住宅=栃木市大宮町)は現在休眠状態で、受取人の吉羽宏四郎氏は既に亡くなっている。

 さて、この約束手形がいったいどの様な経緯で振り出されたものなのか、先ずは支払い場所の指定先、足利銀行新栃木支店に話を聞いてみた。
 同行の三澤次長によれば「約束手形その物は本物であるが、安田住宅が引き起こした巨額脱税の事件後、先方の申し入れを受け、当座取引を解消した」との話だ。その時、手形帳の回収をはかったが、安田(当時社長)が勝手に処分したとのことで、回収は為されなかったという。

 この話とてかなり非常識ではあるが、銀行は仕方がないとして済ませている。
 手形や小切手を介在させての、悪意的な事故や事件は頻繁に起こっている。自身が与り知らない間に、手形が振り出されでもすれば金額によっては破滅する場合だってある。それ故に、約束手形の交付を受ける経営者はその取り扱いに、厳重な注意を払わなければならない。
 実際、当紙が手にしている手形は、記述内容はどうあれ、安田本人が振り出した本物であることには違いなく、この手形の存在は当然安田から銀行へ、最低限の義務として報告が上がっていてもいい筈だ。

 足利銀行にとっても、処分されていた筈の手形が出現した訳だから、今後、完全な形での手形が持ち込まれる可能性も、否定することは出来ないだろう。
 それらの支払いを拒否することは簡単だが、回収を怠った責任からは逃げることは許されない。
 同行は一刻も早く安田を再追求することで、手形の行方とその使用目的を明らかにし、事件性が発覚したなら速やかに、告発を含む然るべき処置をしなければならない。

 
 死人に口なし

 安田が手形は処分したと言う銀行への弁明は、回収を逃れるための嘘ということになるが、それでは安田は何故?嘘をついてまで手形の返却に応じなかったのか。

 先に記した巨額脱税で、服役という重い刑事責任を問われたのは、社長の安田ではなく、当時側近だった吉羽宏四郎だった。
 安田周辺から漏れ伝わる話では、全てを背負い、刑務所落ちを命じられた吉羽が、その報酬として約束されたのが、今回の手形に記載されている2億円という話だ。
 実際、捜査攪乱が目的だったのかは定かでないが、既に逮捕を覚悟していた吉羽は、一時のあいだ逃亡していたのだが、残した家族や友人に対しては、手形の存在をほのめかしていたそうだ。ということは、今回の手形が意味するものは、安田と吉羽との“覚書”と見るのが妥当のようだ。

 現在安田は、オリエンタル技術開発(栃木市)の会長として、過去は精算したかに振舞っている。しかも元県議の顔を活かして、県や市の行政機関から測量業務を数多く受注するなど、表向きは地元名士として幅を利かせているのだから、世の中は不思議である。

 次回は安田が当紙に語った“言い訳と嘘”を軸に、事の真相を突き詰めてみたい。
〔以下次号〕

 
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