改革の旗印のもと、総理に就任し、今もって国民から驚異的な支持を受ける小泉純一郎。その余勢にぶら下がる自民党にあっても、権力が及ばない“野党の聖域”が東北に存在する。
言わずと知れた“日本一新”を高らかに宣言する某野党の牙城である。
腐敗した旧体制を打破し新たな国家の建設を掲げるこの野党も、当紙先月号で報じたように、その実体は現体制と何ら変わらない癒着にどっぷり浸った利権漁りの集団でしかなかった。
思い起こせば、将来約束されていた総裁候補の座を蹴ってまでも確固たる信念を持って自民党を飛び出した当時の“あの方”には、当紙も大いに期待を寄せ、陰ながら応援していたのだが……。
結局、立場は変われど所詮自民党からの枝別れでしかなく、根っ子は一緒でしかなかったという事か。
当紙先月号では、この野党の代議士と関連企業が、所有既得利権(地元行政発注事業)に入り込もうとした新たな参入業者に対して恫喝を織りまぜながら談合の強制を行なったあらましを報じた。
今回は、結果として談合の調整がつかずに新参者に仕事を奪われてしまった彼らが、新参業者に対し執拗且つ陰湿な妨害を繰り返した事実を追及する。
○○県内に27ある県立病院全ての清掃事業という大型案件を既成業者から奪い取ったN興業(本社東京)であるが、その事業は出端から挫かれた。
事もあろうか、同案件の前任業者(T代議士の関係業者が加入する組合)が作業員全員を現場から引き上げてしまったのである。
本来なら受注業者が入れ変わった場合には、業界の慣習として現場の作業員を次の業者に引き継がせるのが習わしである。
これは仕事に就く作業員の大半が日給月給制である事と、その現場に慣れているという事に加え、事業発注者に迷惑を掛けないための配慮から成るものだ。
業務引き継ぎ時の混乱防止と作業員の雇用確保を敢えて無視してまでも、前任業者はN興業に対し圧力を掛けたのである。
これによってN興業は新たな作業員の募集と、業務指導等の作業を余儀無くされ、結果的にこの事が後々の混乱を招く布石にもなってしまったのだ。
又、N興業が同時に進めていた運転資金の調達においても、県保証協会の承諾を得て、地元に本店を置くI銀行からの融資がほぼ決定していたにも関らず、実行直前になって白紙撤回される事態も起こった。
この事については、I銀行本店調査役が融資を断る際に「N興業へ融資をするのであれば、組合関連の全業者がI銀行との取引を取り止める」と脅されたと言うから事は尋常でない。
更に、事情を知った上での意図的な報道かどうかは定かでないが、N興業を窮地に追い込んだのが、東北地方の有力紙である『K新報』である。
N興業が様々な妨害にあいながらも不馴れな土地で漸く作業員を確保し、何とか病院清掃業務に入ったその僅か数日後には、K新報が『県立病院清掃問題』と取り上げ、新規参入業者に対し批判的な記事で大々的に報じたのである。
その内容は、作業人員の確保も出来てない上、清掃はおろかごみ収集の一つ満足にこなせない有り様で、トイレは常に異臭を放っており、これら殺到する苦情の対応で通常業務に支障をきたし病院が大混乱しているといった、かなり攻撃的なものであった。
当該清掃業務を独占し続けていた組合関連業者の請負金額(高値安定)を、遙か下回る安値で落札したN興業に対し、結局は事後処理に手を焼くだけコスト高になったと皮肉り、地元業者を押し退けたヨソ者を認めないといった論調のまま関連記事の掲載が数回続いたのだ。
しかし、N興業もこの道のプロであり、いつまでも不手際な作業を続けていた訳ではなく、ひと月も経った頃には作業員も仕事になれたことで、表だった苦情(当初から大騒ぎするものでもなかった)も減少してきた。
更に、組合関連業者の談合体質の解消や、県立病院清掃業務の一括発注方式の見直しなど、県に対して問題提起していた市民オンブズマンが、N興業の安値受注を「税金の無駄遣いの改善に繋がった」と、高く評価するなどの声も上がり始めた。
又、行政が新たな入札を試み、一つの成果を上げたとしたNHKの報道がなされた事もあり、何時しかK新報の批判的報道も収まっていた。
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